目蒲線

東急目黒駅
東急目黒駅(1995年7月)

 東京都内を走っている私鉄、東急目蒲線が8月5日をもって無くなってしまった。正確には運転系統の変更と言うことで、路線自体が無くなったわけではない。けれど、ひとつの“形”が消えてしまうのは非常に悲しい。

 東急目蒲線は、東京の目黒駅と蒲田駅を結ぶ全長13.1kmの「山の手の下町」を走る電車。山の手の下町というのはおかしいけれど、目蒲線の沿線は目黒や田園調布などの山の手である。でも、大きい駅から離れると、道は細く、家が建ち並んで、地元の商店街が元気な下町風の所がある。
 目蒲線の電車も4両編成の短い電車が走っていた。満員の通勤電車と言うより、近所の主婦やこどもたちが乗り合わせる雰囲気が似合っていた。駅の建物も大きくなく、ちょこんとたっている感じだった。もちろん、駅を降りると商店街があって多くの人が行き交っている。
 目蒲線は街と一体になっている、町の人の生活に根ざした路線だったと思う(あくまで僕個人の感想だけど)。

 今回の運行系統の変更で、目蒲線の半分は地下鉄に乗り入れる大きな電車が走る線になってしまった。目蒲線がなくなるという8月5日、特に忙しいわけでもなかったので電車に乗りに行った。
 路線の半分は、地下鉄乗り入れのために、大きな工事が行われていた。雰囲気もがらっと変わってしまっていた。でも、残りの半分は3両編成の短い電車が走り続ける。僕の小学校当時の記憶と同じ、緑の電車とちょこんとした駅が残る愛すべき線であり続けるようだ。

 僕は特別目蒲線に思い出があるわけでもない。小学校の時のスタンプラリーで「こんな線があるんだぁ」と思ったほどである。これだけの思いででも、目蒲線が無くなってしまうと言うとやっぱり悲しい。


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