東北の温泉

乳頭温泉
乳頭温泉

 8月18日の夜から、23日の朝まで東北の北西部に行って来た。つまみ食い(いろんな場所ちょっとずつ見て回る)の旅行だったけれど、おもしろい旅行であった。

 夜行で東京から新潟へでる。日本海川をひたすら北上して秋田へ。秋田は大曲でレンタカーを調達して、田沢湖へ。湖をぐるっと回って、乳頭温泉。同泊。
 翌日、八幡平をドライブして十和田湖へ。奥入瀬渓谷を含めて、湖をまわる。青荷温泉泊。三日目、弘前から「白神ライン」で日本海側へぬける。深浦町の民宿サブシロ泊。最終日、白神の麓、十二湖を散策してクルマで南下。帰路に着く。
 秋田と津軽をぐるっと回った。後半の白神山地の自然はすごかった。「白神ライン」はいくら走っても山しか見えない。その山は豊かな広葉樹に覆われていた。流れ出てくる水はすんでいて、手がしびれるほど冷たく、飲むとほのかに甘い。

 自然もすばらしかったけれど、乳頭温泉と青荷温泉には日本を感じた。
 どちらの温泉も、人里離れて奥まった山にひっそりとある。くねくねとした山道を行った終点に温泉がある。当然、温泉に用のある人しか行かない。逆に、どこか人を寄せ付けない雰囲気さえ感じられる。
 宿の建物は程良く小さい。露天の温泉も大きいとは言えない。十人も入ったらいっぱいになってしまう。小さな温泉に、ランプのほのかな明かりに照らされて入る。空は黒く星が光っている。「時を忘れるとはこのことか」。人里離れた山奥で、外界との接触はほとんどなく。山の空気に近く山の時間が流れている。
 帰るときに宿を振り返ると、山の中にぽつんとある。山の中には小さい宿と露天風呂しか見えない。露天風呂と宿の小ささが、外界との遮断を象徴している気がする。そして、それは東北の原風景だと思う。

 なんて、大げさに書いてしまったけれど、ま、東北の一件宿の温泉は山の中にあってのんびりしていて、日本を感じるなぁ。ここが日本で良かったなぁ。


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