桜

東京千鳥が淵の染井吉野

 今年は桜がよく持った。先週のはじめにほぼ満開になって、先週いっぱい満開の桜を楽しむことができた。満開の桜並木を見ると、春がきた、新しい季節がきた、と思いうれしくなると同時に少し寂しさも感じる。

 今年の冬は寒かった。関東地方では雪が何回も降った。「冬は寒いだけではつまらないから、雪が降ってほしいです」といっていたら、今年は雪の当たり年だった。
 寒い時期が長かった。そのせいか、梅の花が咲くのはとっても遅かったような気がする。けれど、その後が早かった。3月25日くらいにはもう、桜の花が咲き始めた。
 桜は普通、咲き始めてから1週間で満開になって、すぐにちり始めてしまう。ということは、3月末から4月はじめがちょうど見頃になるだろうとの予想だった。けれど、今年、僕は3月末、神戸にいる予定だった。神戸にも桜の見所はあるのだろうけど、関東より咲くのが遅い。ひょっとすると、3分咲きの桜を見て、もどってきたら、ちりはじめなのか? と心配した。
 でも、4月1日に横浜に戻ってきても桜は満開でまだまだ散る気配はなかった(神戸も満開に近かった)。ちょっとほっとした。早速カメラを持って地元の桜の名所に向かった。
 去年、桜を撮っていて、八重桜が気に入った。ピンク色の花びらがとっても柔らかそうで、優しい印象を持った。逆に、ソメイヨシノには、その白さからか、どこかとげとげしいイメージを持ってしまった。
 だから、今年ソメイヨシノを撮りに出かけるのは少し心配だった。わくわくしながらシャッターが切れるのだろうか? と。けれど、その心配は必要なかった。桜の花一つ一つに目を向けると、とげとげしさは全くなかった。それどころか、桜の花の寿命はたった1週間、と思うと、花一輪、一輪はとってもかよわい物に思えてきた。今では、その弱さを隠すために、多くの花が一緒に咲いて強く見せようとしているのではないか、とさえ思う。
 僕の友人で、桜の花はすぐ散ってしまうからはかないイメージがあって好きではない、といった人がいる。でも、僕はそうは思わない。すぐ散ってしまうという部分があるから、よりいっそう美しく見えるのだと思う。


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