かつ丼

 たっぷりのご飯の上に、たまごとタマネギと豚カツが乗る、それを束ねるだしとしょうゆ。これが絶妙の組み合わせではないとしたら、何が絶妙の組み合わせなのか。

 読んでいる人で、かつ丼を嫌いな人がいたらごめんなさい。僕の好きな食べ物ベスト10の中に間違いなく入るかつ丼。これほどまとまった料理はなかなかないと思う。
 どんぶりを埋め尽くす、半熟たまごでとじられた豚カツ。その間にちらほら見えるタマネギ。
 まず、たまごとタマネギを食べる。だしが多そうなところで。一口食べるとだいたい味の全容がわかる。いくら好きな食べ物でも、旨い場合とあまり旨くない場合がある。それにそのときの自分の欲している味もある。かつ丼には基本的にはずれはないけれど、いろいろな味がある。これはそのときの気分次第なので、一口目を食べてみて、自分の気分と一致しているとかなりうれしい。一致してなくも、だいたいかつ丼はおいしく、気分がかつ丼に引きずられる。
 次に、掘り出したご飯を食べる。適度にだしがかかっていると最高。多少たまごが絡まったりすると言うことはない。どんぶりもののご飯もゆっくり味わうと、しっかりご飯の味がする。まずは、ご飯の味を確かめる。
 続いて、カツにはいる。衣がさくっとしていて、食べられるか食べられないかという熱さがいい。場合によってはだしがしみてしっとりしている場合もある。これもこれでおいしい。でも、どちらかというと衣はさくっとしていて、たまごがしっとりしているのが好みだ。最初は、ご飯は一緒に食べない。
 この次に、すべての具材を一緒に口に運ぶ。そして、しっかりかみしめる。微妙な時間差でいろいろな味がやってくる。その中にも、流れとまとまりがある。これがかつ丼がどんぶりたるゆえんだと思う。

 料理についてあれこれ言うのは、僕は好きじゃない。でも、たまにはいろいろとしゃべりたくなるときもある。とにかく、かつ丼の和が好きだ。


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