早い春

桜

 今年は春が駆け足でやってきた。2月上旬ごろ、例年より少し早く梅が咲いた。その後も、暖かい日が続き、3月になったと思ったらあっという間に桜が咲いた。  今年の冬、関東ではついに雪がつもらずに終わりになりそうだ。梅の花が咲き始めた二月上旬頃、何度か雪がちらついた事はあった。曇り空の時に梅の花を撮りに行ったら、雪が降ってきて凍えながら梅の花を撮った。
 その後は、寒くなっても凍えるような寒さはなく、春の訪れを感じさせる、暖かい三寒四温が続いた。人間も温かさには敏感だけれど、やはり植物や動物が一番敏感だと思う。その中でも桜が一番、春の訪れを感じさせてくれる。桜の派手な雰囲気が僕らに一番アピールするからだと思う。
 その桜、東京では、16日に咲き始めた。観測史上もっとも早い記録だそうだ。各地でも記録を塗り替える早咲きになったそうだ。桜が咲き始めた後も暖かさは続き、あっという間に桜が満開になった。満開になるのが早いと散り始めるのも早い。今年の桜はすぐ散ってしまいそうで寂しさ、はかなさをよりいっそう感じる。
 今年の春は、別の意味で寂しさを感じたことを思い出した。今年の冬が冬らしくなかった事だ。最初にも書いたように今年の冬は雪が積もらなかった。雪は積もると、雪かきをしなければならなくなったり、交通機関に影響が出たりあまりいいことはない。でも、こういう冬の苦労や、冬の寂しさがあるから春がいっそう感じられるのではないかと思う。
 冬が長く、雪で閉ざされる、北海道や東北、北陸地方の人は春を心待ちにして、春がくるとその喜びを身体全体で味わうという。そう言う地方の人たちは、楽しそうに春や夏の話をしてくれる。前にテレビかなにかで、冬の長い北欧の人々の暮らしを聞いたことがある。北欧の人たちは日本の北国の人以上に夏を満喫するという。

 桜の花も寒い冬であればあるほど美しくなるという話を聞いた事があるような気がする。僕らも寒い季節があるからこそ、暖かくなる季節が楽しみになるのだと思う。今年は少し春の喜びが減ってしまったのかも知れない。でも春は、それだけでもうれしい事も事実だ。


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