新芽

ケヤキの若葉
ケヤキの若葉

 今年は春の訪れが早い。横浜では染井吉野は花が散り、もうまもなく葉桜がきれいな季節になる。桜の隣ではケヤキの新芽が陽の光に透けている。

 桜の花の写真を撮りに行ったら、隣で新しい芽を出しているケヤキの木が先に目に飛び込んできた。桜の淡いピンク色も美しい。それ以上に陽に透けている若葉はきれいだった。桜にカメラを向ける前に緑の葉の写真を撮ってしまった。毎年、若芽には惹かれるのだけれど、桜を撮りに行って桜より先に写真を撮ってしまったのは初めてだった。
 新しい葉は、淡い緑で目に和む。それ以上に僕は若い芽からエネルギーを感じたいのだと思う。若い芽は、すぐ散ってしまう花と違ってこれから半年間生きていくエネルギーを秘めている。そういう若い葉を見て自分もこれからのエネルギーをもらいたいのだと思う。  僕がエネルギーを求めるのは、僕にとっても新しい季節が始まるからだと思う。4月は新しい1年間の始まりだ。昨年度の反省をしながら新しい1年間をどう過ごそうか考える。前向きに考えられることもあれば、ゆううつになりそうなこともある。そういう時に目に入る緑のエネルギーはとてもうれしい。
 季節は不思議だ。僕らの生活のリズムにぴたりと一致しているように思う。新しい事を始める時期に花が咲き、新しい芽が出る。どこか沈んだイメージになるのは冬が多い。季節が僕らの生活に合わせて推移しているような感覚すら覚える。
 しかし、これは逆だ。僕らに季節が合わせているのではなくて、僕らが季節に合わせて生活している。どうして4月が新学期になったのか、いきさつは知らない。でも、春という1年間の始まりのシーズンに僕らも活動を始めるのはとても理にかなっていると思う。今の暦では、1月よりも4月の方が1年の始まりだという気分にもなる。

 都会で生活していると季節を感じなくても生活できる気になってしまう。でも、4月は少しゆううつだった古い事が終わって、新しいことが始まる予感がしたり、実際に始まる季節だ。窓の外に目を移せば、寒く閉ざされた雰囲気のする冬は終わり、花が咲き新しい新芽が出る新しい季節が始まっている。


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