月夜の散歩

月食
月食でかけ始めている満月

 先週の月曜日の夜、電車を降りて家までの道を歩き始めると、月が黒い空にとても綺麗に浮かび上がっていた。満月かな、と思っていたら満月ではなく十六夜の月だったけれど、久々に綺麗な月を見た。

 この日は朝は雨が降っていて、いつものように自転車で駅に行くことはできなかった。そのため帰りは駅から自宅まで歩きだった。帰宅時はだいたいお腹が減っていることが多いので急ぎ足で家に向かっている。駅前の歩道橋を上がり、空を見上げるとほとんどまん丸になった月が浮かんでいた。薄く曇っていて光が雲に当たり幻想的な雰囲気さえあった。  僕は月を見ながらゆっくり歩くことにした。風が強かったので雲がどんどん流れていく。時折月が完全に隠されたり、完全に見えたりする。大きな雲が来るとずっと月が見えなくなってしまうのではないか、と心配にもなる。けれど、ゆっくり歩いていると、すぐに雲は晴れて明るい月が見える。
 駅前の明るい通りを離れて住宅地の中を歩く。家の影に月が入ったり、家がとぎれ月が顔を出したりする。今日は街灯の明かりもいつもより明るいような気がする。
 住宅街を抜け、たんぼの中を歩く。曇っているときは危なっかしくて歩けないような道だ。でも、月の明るさは想像以上に明るい。懐中電灯や小さい街灯などよりも全然明るい。くらい空を見ていて月のあるところに目をやると明るすぎるくらいだ。でも、目が慣れてくると、雲が晴れてくっきりした月に、餅をつくウサギの姿が浮かび上がってくる。
 再び雲がかかりぼやっとした幻想的な月になる頃自宅についた。よく見ると、月明かりで家に影ができている。子どもの頃月で影ができていて、「月明かりはこんなに明るいのか」と驚いたことを思い出した。
 街灯の光もなく、月の白い光だけ当たっている所は、立体感がない。木々が白く薄く浮かび上がっている。太陽の光が当たった昼間とは別の世界のようだった。

 昼間はいろいろなことがあったりする。良いこともあれば、悪いことが続くときもある。そういうときに運良くこういう月夜に出会えると少し落ち着いた気持ちになれる。


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