芥川賞

文庫本

 先週、1月16日芥川賞・直木賞の発表があった。芥川賞には大道珠貴 氏の「しょっぱいドライブ」が選ばれた。直木賞は受賞作無しとなった。申し訳ないのだが、この「しょっぱいドライブ」は読んでいない。しかし、高校生が芥川賞の候補になり、話題になった、島本理生 氏の「リトル・バイ・リトル」は早速読んでしまった。

 文学賞にはいろいろな問題点も言われている。その文学賞のなかでも、特に有名なのが芥川賞と直木賞だ。年二回選考され、受賞作品は文藝春秋に掲載される(文藝春秋社が主催なのだ)。芥川賞はいわゆる純文学、直木賞は大衆文学の新人・中堅作家に送られる。
 両賞は若手の登竜門のひとつ、と言われたりもする。しかし、芥川賞を受賞した作家をあげろ、と言われてもぱっとこない。ここ数年だと、大学在学中に受賞した平野啓一郎 氏(受賞作「日蝕」僕は既読)や、中堅大衆文学作家であった花村満月 氏(同「ゲルマニウムの夜」同未読)が記憶に残っている程度だ。どちらも、話題になったので印象に残っていた。もはや、芥川賞作家と言っても、他に何か話題がなければなかなか本は売れない。
 他に、テレビ、インターネットなどがこれほどまでに普及してしまえばなかなか本を手にとって読もうとは思わない。それ以上に、芥川賞をとっていなくても、面白い作品を書く作家もいっぱいいる。僕の好きな村上春樹 氏、よしもとばなな 氏、少し古いけど小松左京 氏などなど。これらの作家は芥川賞でも直木賞でもないジャンルの作品を書いているような気がする。ひょっとしたら、それは新しい時代なのかもしれない。そして芥川賞、直木賞の枠組みが時代に合わなくなって来ているのだと思う。

 さて、話を「リトル・バイ・リトル」に戻そう。この作品は話題になったから読んだのだけれど、ポイントは僕に近い世代の人が書いた本だったからだ(同じ理由で平野氏の「日蝕」も読んだ)。僕は、僕の世代に近い等身大の世界を期待して読んだ。結構、あわてて読んでしまったので感想は書かないけれど、高校生らしい部分も感じることができたし、僕らの世代かな思った。これからもっとこういう、僕らと同じ世代の考えを持った人がいろいろなところで活躍してくれるとうれしいと思う。

島本理生『リトル・バイ・リトル』 「群像」2002年11月号


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