那智

那智の滝

 少し前になってしまうが、先月の20日から数泊で紀伊半島を訪れる機会があった。僕らは雨の中、那智大社に参った。

 那智は紀伊半島のほぼ先端にある。台風が来ると良く名前がでる、潮岬の近くだ。実は、僕は初めて和歌山県へ足を踏み入れた。三重県、伊勢志摩から紀勢本線という、名前はすごそうだけれど、実はディーゼルカーが2両編成で走っているローカル線で那智へ向かった。
 冬に旅行をすると、木々が冬枯れしている寂しい景色を見続けることが多い。しかし、今回、紀勢本線に乗り、山の中を走っていても、山の木々は杉が多く、緑を保っていた。車内は暖房されていて、とても暖かく冬であることを忘れてしまっていた。それくらい、紀伊半島の杉の木立はみずみずしかった。
 紀伊勝浦の温泉で一泊して朝から那智山へ向かった。僕らが今回行ったのは、那智大社と那智の滝だ。紀伊半島の南側は、信仰の山々で、神社が散在する。那智大社と那智の滝は、今で、南紀に散在する神社の入り口と言うイメージだ。僕らも、本当はここから北上し、熊野本宮などへも訪れたかった。
 さて、那智山へ向かう道のりはあいにく雨になってしまった。紀伊勝浦駅からバスに乗り、しばらく海岸沿いを走り、山へ入っていく。10分ほど走るとすっかり山になった。紀伊半島は海岸からすぐに山が始まる。ここも辺り一帯は杉林で青々と緑をたたえている。
 那智大社は綺麗に手の入れられた朱塗りが鮮やかな社殿を持つ神社であった。隣には、お寺があり、昔ながらの神仏習合が今も残る。そのすぐ近くに巨大な、那智の滝がある。一年中緑豊かな杉林に囲まれ、力強く流れ落ちていた。山からは霧が上がり、まさに信仰の山をイメージさせる。

 紀伊半島は熊野に散在する神社や、伊勢神宮など信仰が厚く、神話の世界では日本が誕生した場所とも言われている。南紀の写真を見ながら、一年中みずみずしく青々とした山を思い浮かべていたら、ここが日本の原点と言った人々の気持ちが少し分かった気がする。


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