春の雨

傘と花びら

 先週の火曜日は春の嵐になった。満開の桜が散り始めてしまった。しかし、雨が上がると暖かくなり、春がやってきたことを感じた。

 先週の火曜日は午後から外出していた。天気予報通りに雨が降り出した。風も強く、傘をさしても濡れてしまうような雨だった。しかし、春の雨は少しあたたかく、多少濡れても平気かな、と思う雨だった。
 残念だったのは、満開だった桜が雨に打たれて散り始めてしまったことだ。
 僕は、春の嵐の二日前、桜の写真を撮りに行った。その前の日も雨が降り、残念なことに桜の花びらがすこし、しおれていた。けれど花が散ることはなく、満開の桜が今年も春を感じさせてくれていた。桜(ソメイヨシノ)の花の寿命は約1週間。他の花に比べると、短い。けれど、この1週間は桜の花が散ることはない。次の世代を作るために、1年のうち1週間、桜の花は咲き誇る。
 今年は、悲しいことに、満開になった翌々日に嵐がやってきて花が散ってしまった。
 風で散るならば、桜吹雪と言う、桜の余韻を楽しむことも出来るだろう。しかし、春の嵐は容赦なく桜を散らせた。
 桜は、新しい生活を祝うように咲き始める。桜色の花は優しく新しい生活を祝福するイメージを持つ。日本で4月から年度が始まるのも、春は新しいことを始めるのに良い季節だからだという。
 新しい生活は古い生活の終わりから始まっている。希望を持って新しい生活を始め、気持ちに隙間が出来た頃に桜が散り始めた。

 今年、桜は嵐で散り始めた。余韻も何もないなと思いながら、家に帰った。しまおうと傘を見ると、そこには一片の桜の花びらが残っていた。外で吹き荒れた嵐もすっかり忘れて、僕は日本の美を意識した。
 今、東京のソメイヨシノはもう半部くらい花が散ってしまった。散った花にかわり、緑の若葉が顔を出し始めている。


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