おたまじゃくし

 もう一月くらい前、狭山丘陵の田んぼ公園で家族が、おたまじゃくしやら、ざりがにやら、とったりして遊んでいた。

 田んぼ公園というのは僕が作った言葉だけど、自然公園の一角として今も使われている田んぼが組み込まれていて、その周りには遊歩道があったり、広場があったり、ベンチがあったり、トイレがあったりする。僕の好きそうなところだ。
 いろんな人が来ていたのだけれど、その中に、ちょっと不良系(ヤンキー系)の家族がいた。田んぼに水遊びに来るという雰囲気ではなくて、失礼な言い方だけど、ああいう人たちも、都会のにぎやかなところだけじゃなくて、田んぼ公園のようなところにもくるんだ、と思った。いろんなところに行くのは、子供にとっても親にとってもいいことだと思う。それに、ひょっとしたらご夫婦は昔、田舎の田んぼをかけずり回っていたのかもしれない。とにかく、そういう親子が他のいかにも「アウトドア派」、「自然派」みたいな人と一緒のところで遊んでいた。
 僕は田んぼとか山とかを見るのと一緒に、親子たちもぼーっと眺めながら、ベンチに座って飯を食べていた。山とか田んぼとか、そこで遊んでいる人たちの光景というのは何となく落ち着くな、とか思いながら。
 親子もそろそろ昼食を食べようかという雰囲気で、田んぼがあるところから僕のいたベンチとかのある方にやってきた。兄弟の弟くんは、お父さん、お母さんについてやってきて、捕まえたざりがにか何かを、水路に戻した。ま、都会に住んでいるのなら、賢明かな、と思った。お兄ちゃんは後から走って追いかけてきたんだけど、途中で転んで、おたまじゃくしの入ったバケツをひっくり返してしまった。おたまじゃくしは、田んぼのあぜ道に“まかれて”しまった。でも、そのままお父さんたちの方に走ってきてしまって「あれ、あんたおたまじゃくしはどうしたの?」と聞かれて、バケツをひっくり返したことを言うと、お父さん、お母さんに怒られて、おたまじゃくしを拾って水路の戻しに行った。

 子供がその場で、おたまじゃくしを拾ってあげなかったのは、ちょっと悲しかったけど、親子のやりとりに、ほっとした。両親、田舎出身説も濃厚か?!、と思った。


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