台風一過

草千里

 台風の大嵐は、僕らをどこかわくわくさせる。台風の大雨で交通機関が麻痺すると、いくら人間の科学が発達しても、こういう大嵐には勝てないんだろうな、と自然の驚異というか、人間が自然の中で生きていることを実感させられる。そして、台風一過の空には圧倒させられる。

 先週、台風10号が日本列島を縦断する形で通り過ぎていった。大きい台風だったようで、台風の中心が四国沖にある言うときから、東京では横殴りの雨が降っていた。台風の動きもかなり遅かったようで、東京では金曜日の昼頃から雨が強くなり丸1日以上、土曜日の夕方頃まで風雨の強い状態が続いた。金曜日の僕の予想では、台風は土曜日の朝までには関東からは抜けているだろうと思っていた。が、昼過ぎまで雨が降り続け、僕は予定していた花火をあきらめることになった。
 昼頃、買い物の用事もあったので、出かけようか少し迷ったのだが、絶対しなければならないことではなかったので、結局やめてしまった。本を読んだりしながら過ごすと、夕方には雨がやんだ。買い物をかねて、台風一過の夕焼けを見ようと、自転車で川沿いを通って、駅前へ向かうことにした。

 時間は6時位だった。太陽はすでに、かなり西に傾いていて、昼間の青い光から、黄色く輝く光になっていた。台風で洗われた空気はとてもすんでいて、陽の光がそのままやってくる。まだ、台風の外側の雲が空を動いていて、まぶしい黄金色の光を所々さえぎる。それでいて、川は茶色い濁流を轟々と流し、東の空には台風の内側に近い存在感のあるごつごつした雲が空一面を覆っていた。
 すべての物がまるで「世紀末」のような高いコントラストに包まれていた。乾きはじめた河川敷のグランドを歩く人の姿はまるで別世界で、ススキ野原はまるで月光に照らし出されたようにコントラストのみが光っていた。

 買い物を終えて、川沿いに戻ってくると、太陽は地平線近くまで落ちていて、街は少し普通のコントラストを取り戻しつつあった。東の空にはとても鮮やかな虹が浮かんでいた。


もどる