打ち水

 先週の週末は、暑く外で動くと汗がだらだら出るほどだった。暑かったけれど、僕は少しは体を動かそうと、自転車で少し走ろうと出かけた。でも、暑いから少しでも涼しそうな川沿いを走っていった。
 近所の浅川を上流へとさかのぼっていくと、ここも八王子市か? と思うくらい山が迫ってきて、川で泳いでいる人たちもいるような所を見つけてしまった。さすがに、水着は持ってきていなかったので泳ぐのはあきらめたが、サンダル履きだったので、そのまま川に入っていった。川の水は程良く冷たく、嫌なにおいもほとんどせず、これなら水着で入っても良いかな、と近所にちょっとした隠れスポットを見つけ、うれしくなった。
 さらに、川をさかのぼっていくと、バスも通らないような細い道になって川もうんと細くなって流れも急になった。さながら小さな渓谷だ。まわりは森で、辺り一帯みずみずしく、涼しかった。僕は、再び、自転車を止めて川に入っていった。水はきりっと冷たく、しばらく足をつけておくと痛くなりそうなほどだった。八王子駅から20kmも離れていないところに、こういう場所があるのか、とまたもやうれしくなった。

 その前後、都心で"打ち水"の実験が行われた、と言うニュースを耳にした。
 中央区や墨田区などを中心に都心で一斉に、軒先に水をまく、打ち水が行われたそうだ。場所によっては、気温が0.5度くらい下がったと言う。打ち水に参加した人は、その涼しさを確かに体感したようだ。街全体で気温が0.5度下がるというのは結構大きな違いで、打ち水をした所は、みずみずしい渓谷のように涼しくなっているのだと思う。
 昔から、日本では「涼をとる」という言葉があるように、暑い日本の夏をどうやって快適に過ごすかと言うことが考えられてきた。生け垣や、家の設計、打ち水、風鈴の音。今の僕らからすると、「そんな事しても涼しくならないよ」と思ってしまいそうなことだ。
 でも、緑を植えたり、打ち水をすることは科学的にも涼しくなると証明されていることだ。昔ながらの設計の家の方が科学的に見ても涼しいという事も聞いたことがある。それに、生け垣や打ち水は、エアコンのようにエネルギーを必要としない。エアコンは部屋の温度は下がるけれど、逆に外の温度を上げてしまい、都市部の温暖化原因のひとつとされている。昔からの日本のやり方というのは、都市部を温暖化させないという点でとっても、進んでいるのだと思う。


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