渋谷川

渋谷の雑踏
渋谷の雑踏

 「あなたは、渋谷川を知っていますか?」先週、FMを聴いていたらこう聞かれた。僕は残念ながら渋谷川を詳しく知らなかった。

 渋谷川とは文字通り東京都渋谷を流れる川だ。水源地は新宿御苑の池らしい。そこから、多くの支流を集め、恵比寿、南麻布のあたりを流れ、古川と名を変え、芝公園の南側を流れ、東京湾へ注いでいる。河口には首都高速を使う人にはおなじみの「浜崎橋」がかかる。  渋谷川は、今ではコンクリートで覆われ暗渠(あんきょ)になっていたり、コンクリートで周りを固められてしまっている。典型的な東京の、川というか、もはや水路だ。水は濁り、悪臭を放ち、ゴミが散在し、中には投げ込まれたとおぼしき粗大ゴミまである。そんな、川とは言えなくなってしまったような川だ。
 しかし、実はこの渋谷川(正確には支流、宇田川(うだがわ)の支流、河骨川(こうぼねかわ))、『春の小川はさらさらゆくよ』の「春の小川」が生まれた場所なのだ。歌詞の中では、すみれやれんげが咲き、えび、めだか、小ぶなが群れている。
 今では田舎に行かないと見られないような光景が、かつては東京のど真ん中、それももっともゴチャゴチャした街、渋谷にあったのだ。「春の小川」は大正元年(1912)の発表と言うから、90年ほど前には渋谷の街では、すみれやれんげ、めだかが見られたのだ。それが、たった90年で見る影もなくなってしまった。
 しかし、今、コンクリートで固められて、蓋をされてしまった都会の川を何とか本来の姿に戻せないだろうか、と言う運動が始まっている。東京の川の多くは、何度もの洪水をおこし川岸を固められた。高度経済成長の時代に川が汚染された。さらに、道を造るため蓋をされた。しかし、これからはそういう時代ではなく、川の「うるおい」を中心に都市が作られて行くべきではないのか? 道路中心の街づくりから転換すべきではないのか、と言う考えに基づいて活動が始まっている。

 都市の川を取り戻すのは、今すぐというのは難しいかも知れない。しかし、いつかは都会のど真ん中に「春の小川」が流れてほしい。


世界都市河川ルネッサンス http://www.shibuyagawa.net/


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