イラク人質事件

 4月8日、イラクで日本人3人が「サラヤ・ムジャヒディン」と名乗るイスラム過激派組織に人質に取られ、イラクからの自衛隊の撤退を要求された。日本は早々に自衛隊の撤退のないことを表明し、また、人質の救出に全力を傾けた。4月11日未明、事態は一転。犯行グループから24時間以内に人質の解放するとのメッセージが送られてきた。

 犯行グループの犯行声明、解放声明では、日本に対して、友好的な感情がある述べられている。しかし、その日本が米国の言いなりになり、イラクの領土の占領に荷担し、イラクの内政への干渉に荷担している、と言う主張がなされている。
 もちろん、文民を人質に取り、脅迫する行為は許されることではない。そのような行為で、混乱期にあるイラクの中で政治的な力を伸ばそうという意図も許されることではない。
 しかし、そられらのことを除けば、彼らの考えは間違った事ではないと思う。
 日本もかつて絶対的な権力を持った軍事政権の崩壊と、米国による統治という過去を経験している。そのような、米国による統治を受けた国が、今は米国の言いなりになり、イラクの占領に荷担している。これは、彼らにとって許し難いことであろう。自らの国も、これから50年以上の長きに渡り、米国の言いなりになる事を意味しているからだ。
 日本は、自衛隊の復興支援は米国の占領活動とは無関係であるとも主張する。しかし、米英によるイラク戦争を肯定した以上、自衛隊の活動は米国の占領活動を支持していると解釈されて当然のことだ。
 イラクの復興支援において、日本が何をすべきだったか。日本が米国の言いなりにならず、日本と言う国が世界に確固として存在していることを示すことも必要だったのではないか。
 日本は、多くの市民が犠牲になり、被爆さえ経験した戦争を経験しながらも、そこから経済的に大きく発展してきた。また、「再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい(日本国憲法)」という思いを持ってきた。その理想を自ら実現し、経済的にだけではなく、精神的にも自立した国となることが、今、混乱の占領状態にあるイラクに希望と安定をもたらすことになるのではないか。


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