ノルウェイの森

 村上春樹氏の代表作品である、『ノルウェイの森』。僕は全然知らなかったんだけど、『ノルウェイの森』が国内作家の小説では発行部数一位だったという。

 発行部数一位だった、と過去形なのは、先月、片山恭一氏の『世界の中心で、愛をさけぶ』が抜いたからだ。実は僕、片山さんも『世界の中心で、愛をさけぶ』も知らない、かなり、非常識ものでした。良い機会なので、『世界の中心で、愛をさけぶ』は、読んでみようかと思っています(感想文が書けそうだったらここのコーナーに書きます)。
 さて、村上春樹氏の『ノルウェイの森』だが、239万部も売っている(上巻)。文芸小説としては相当な部数なのだろう(10万部売れたらベストセラーとか書いてあるから)。CDのランキングに入れると、SMAP『世界に一つだけの花(235万枚)』を抜いて、第11位に入る。
 正直、『ノルウェイの森』がそんなに売れているというのは驚きだった。僕は、前にも書いたように、村上春樹は好きだし『ノルウェイの森』も好きだけど、村上春樹や、この小説が、誰にでもうけるものだとは、思っていなかった。
 村上氏の小説は、どこか暗く、陰鬱な雰囲気が全体を覆っている事が多い。『ノルウェイの森』はその大きな例のようなものだと思う。主人公のワタナベ、親友のキズキ、キズキの恋人の直子、そして、レイコさん。彼らは、皆どこか不完全で、今にも崩れてしまいそうだ。永沢さんと、恋人ハスミさんは、一見ふたりともすごく完璧な人や、普通の人に見えるが、やはり彼らも結局『ノルウェイの森』の人間なのだ。僕は、『ノルウェイの森』を読んでいると、すこし暗い気持ちになってしまうことが多かった(これは、読んでいるときの精神状態にもよるけど)。そういう小説が、とても多くの人に読まれているのはちょっと意外な気がしたのだ。

 でも、逆に、『ノルウェイの森』が多くの人に読まれている事を前提に考えるなら、僕の予想している以上の人が、自分の不完全さや、無力さを感じているのだと思う。そして、"ワタナベくん"に助けを求めているのかも知れない。


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