城崎

城崎の街並み
街並み

 山陰旅行の最後に、僕ら宿泊地に選んだのは、城崎温泉だった。城崎は兵庫県だから、山陰ではないのだけれど、山陰本線で京都に向かう途中のちょうどよい中継地点だった。
 城崎という温泉地は、多くの文豪達が愛したという。なかでも「城の崎にて」の著作を残している志賀直哉などは有名である。文豪に愛される、というイメージからどことなく、この城崎も落ち着いた温泉地を想像していた。しかし、その城崎も予想に反して「不思議の街」だった、

 JR城崎駅を降りると、目の前に、軽井沢や清里を想像させるような華やかな商店街が並んでいた。駅前には大きな外湯もあり、僕は、この時点で、失礼でしました、と心の中で謝ることになった。
 商店街を進んでいくと、小さな川にあたる。この川沿いに城崎の象徴とも言うべき外湯が並んでいる。僕らは、この川沿いの宿に泊まった。宿の方に、街の楽しみ方を聞く。「お食事の前には、お風呂(外湯)行かれますよね」「ええ、その予定です」「お食事の後もいくつか回ってみて下さい。お店も夜遅くまで開いてますし、スマートボールとかもやってますし」「え? スマートボール?」「ええ」
 さて、食事の後に、お湯につかりに街を歩いていくと、土産屋、アイスクリーム屋などには、多くの人がいて、温泉街ならではの活気を持っていた。そして、その遊技場も多くの人でごった返していた。スマートボールだけでなく、射的も行列が出来るほどの人気で、なんだか、「千と千尋の神隠し」の不思議の街に迷い込んでしまった様な感覚だった。城崎の街のにぎわいは、一番奥にある外湯の鴻の湯までつづいていた。
 にぎわいを少し離れ、川のほとりをゆっくりと歩けば、なんだか文学も書けてしまいそうなしっとりとした雰囲気も味わえる。とっても、不思議で楽しい街だった。

 城崎はかつて、内湯を持った大きなホテルの進出に街が揺れたという。でも、いまの城崎の街を見ると、ホテルの中で内湯につかるよりも、不思議の街を歩き外湯を巡るという楽しみ方がしっかり定着している気がする。


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