「血と骨」

 先週、梁石日(ヤン・ソギル)原作、崔洋一(サイ ヨウイチ)監督の映画「血と骨」を見てきた。「俳優」北野武主演の映画ということで、軽い気持ちで見に行ったのだが、この映画はそう軽いものではなかった。

 何度かここで北野武の映画の紹介をしてきた。僕はなかなか映画館には足を運ばないんだけど(面倒なのだ)、北野武の映画は見ようとしている。最初に見たのは「HANA-BI」で、賞をとったから見てみるか、という不純な(?)動機からだ。でも、北野武の映画はおもしろいし、個人的にも好きになったので、見るようになったのだ。
 また、俳優としてのビートたけし(北野武の映画では出演はビートたけしとなっている)の迫力もすごいものがある。と言うわけで、今回は、「血と骨」がどういう映画かあまり知らずに(他の映画を見るときもそうだけど)、映画を見てきた。
 北野武が主演ということで、過激な映画を想像していた。たしかに、過激な人の人生を描いた映画ではあった。でも、見終わった直後、これだけの映像を見せておきながら、一体この映画は何を言いたいんだ? 1800円損したかな、と思ってしまった。
 暴力や狂気を描いた映画はこれまでたくさんあった。北野武の映画はその良い例で、ほとんどが、暴力や狂気に満ちている。でも、見終わったときに大きな物語を見たな、という気になるし、映画でお腹いっぱいになってぼーっとしてしまう。
 「血と骨」はそうならなかったのだ。でも、せっかく1800円も払ったんだからと思って、もう一度消化しなおしてみた。
 気づいたのは、自分で映画を拒絶していたようだったのだ。一つの理由は主人公の行動だ。とんでもない人物に描かれているが、主人公の行動は、僕らが心の奥の方に眠らせている部分が、行動となって表に出てきただけだと思うからだ。この映画を見ている間、自分の心の闇が表に出された様な気がしてならなかった。
 もう一つ、この映画を拒絶した理由は、日本人に対する感情を感じてしまったからだと思う。こういうのは好きじゃないけど、原作・監督とも朝鮮半島にゆかりの方だ。そして、何となく映画を見ていて日本に対するある感情を感じてしまった。ま、僕の勝手な思いこみかも知れないけど、日本と韓国・朝鮮民主主義人民共和国の間には歴史的なものがいまだに横たわっているのかも知れない。


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